手足口病とは?症状の見分け方・自宅ケアと登園の目安を小児科医が解説
この記事の目次
まず知っておきたい結論
手足口病はコクサッキーウイルスやエンテロウイルスによるウイルス感染症で、夏(5月〜8月)に流行します。
子どもの90%以上は軽症で、自宅ケアで対応できます。名前の通り、手・足・口に発疹が出るのが特徴ですが、実は口の中の痛みで食べ進まなくなることが多い。親としての工夫はここにあります。
重症化は稀ですが、高熱や異常な症状が出たときの見分け方を知っておくことが大事です。
手足口病とは
発症のしくみ
手足口病は、コクサッキーウイルスA群(主にA16)またはエンテロウイルス71などによる感染症です。感染後3〜7日の潜伏期間を経て発症します。
ウイルスの感染経路は3つあります。唾液や鼻水から感染する飛沫感染、水疱の液や便から感染する接触感染、そして口から直接摂取する経口感染です。特に保育園や幼稚園では、おむつ替えやおもちゃの共有を通じた接触感染が一般的です。
外来でも「どうしてうちの子だけ?」という質問を受けますが、ウイルスは感染力が高く、一度園内で流行し始めると防ぐのは難しい。わが家でも下の子が持ち帰ったとき、上の子にうつってしまいました。
なぜ「手足口」という名前なのか
手、足、口に典型的な発疹が出るから、という素朴な命名です。医学的には他の部位に出ることもあり、例えば肘やお尻に出ることもあります。
症状の見分け方
典型的な発症パターン
手足口病は、風邪のような症状から始まることがほとんどです。
初日〜2日目: 発熱(37℃〜38℃が多い)、咳、鼻水、軽い喉の痛み。この段階では「ただの風邪かな」と区別がつきません。
3日目以降: 手のひら、足の裏、口の中に米粒大から小豆大の発疹が出始めます。口の中の発疹(口内炎)は特に痛く、子どもが食べたがらなくなる理由がここです。
発疹は通常、かゆみや痛みがなく(口内炎は除く)、数日で自然に消えていきます。発疹が出た時点では、すでに感染力は弱まり始めています。
似た病気との違い
よく受診される親御さんは「これって手足口病ですか?」と写真を持ってきます。外来でも「溶連菌感染症ではないか」「ヘルパンギーナではないか」という質問を受けます。
手足口病 vs ヘルパンギーナ: ヘルパンギーナは喉の奥の口蓋垂(のどちんこ)周辺に特に発疹ができます。手足口病は手足に発疹が出ますが、ヘルパンギーナは手足に出ません。また、ヘルパンギーナの方が高熱が出やすい傾向があります。
手足口病 vs 溶連菌感染症: 溶連菌感染症は舌が「いちご舌」と呼ばれるぶつぶつした状態になり、全身に細かい赤い発疹が出ます。手足口病のように限定された場所には出ません。
診断は臨床症状とウイルス検査(咽頭ぬぐい液やPCR)で確定しますが、外来でも典型的な症状があれば、ほぼその場で「手足口病だと思います」と診断できます。
自宅ケアのポイント
食事管理がもっとも重要
手足口病で親が困るのは、食べさせることです。口内炎の痛みで、子どもは食事を避けるようになります。
冷たくて、栄養価の高い、飲み込みやすいものを選んでください。ヨーグルト、アイスクリーム、ゼリー、冷たいうどん、シリアルに牛乳をかけたもの、バナナなどが良いでしょう。
逆に避けるべきは、酸っぱい飲み物(オレンジジュース、スポーツドリンク)、塩辛いもの、熱い食べ物です。これらは口内炎にしみて、ますます食べなくなります。
口の中に小さい子どもには、スプーンで食べ物を冷ましてから与える工夫も大切です。わが家でも妻が「とにかく冷たいものばかり用意した」と言っていました。
水分補給
発熱と経口摂取の減少で脱水になりやすいです。少量ずつ、こまめに水分を与えることが重要です。麦茶や水を冷やして、1時間ごとにスプーン1杯ずつ飲ませるのでも構いません。
尿の色が薄いか濃いかで脱水の程度を判断できます。濃い黄色の尿が出ていれば、もっと水分が必要です。
発熱への対処
手足口病での高熱は、ウイルスと戦っている証拠です。一般的には38℃程度の発熱なら、無理に下げる必要はありません。
ただし、子どもがぐったりしていたり、本人が辛そうなら、アセトアミノフェンやイブプロフェンの小児用解熱薬を使うことで、食事がしやすくなったり、睡眠がとれたりします。
発疹のケア
手足の発疹は通常、かゆみや痛みがありません。発疹部分を触ったり、爪でひっかくと二次感染のリスクが高まるため、爪を短く切っておくことが重要です。
外来でも、母親から「発疹をかきむしっています」という相談を受けることがありますが、軟膏を塗る必要は基本的にありません。むしろ、患部を清潔に保ち、触らせないようにすることが先決です。
登園・登校の目安
医学的な治癒基準
手足口病についての登園基準は、自治体や園によってまちまちです。医学的に明確に定められた「いつまで休むべき」という基準がないのが実情です。
日本小児科学会では、解熱後1〜2日が経過し、全身状態が良好であれば登園を許可してもよいと示唆しています。ただし、口内炎が痛くて食べられない状態や、高熱がまだ続いている場合は、本人の体力回復を優先させるべきです。
実際の運用
保育園や幼稚園によっては、「発疹がなくなるまで」という園もあれば、「熱が下がれば登園可」という園もあります。園の方針を確認することが先決です。
感染力の観点からいえば、発熱がある期間がもっとも他児への感染リスクが高く、発疹が出た時点では感染力は急速に低下します。むしろ、症状がない健康な子どもの便から長期間ウイルスが排出されることの方が、実は公衆衛生的には問題です。
外出のタイミング
発熱があれば、基本的には外出を控えるべきです。熱が下がったら、近所の公園への散歩程度なら問題ありません。ただし、高熱の時期に無理に外出すると、脱水が進み、症状が重くなる可能性があります。
こんな場合はすぐに受診
手足口病は通常、自然に治る病気です。しかし、以下の症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。
髄膜炎の兆候
持続的な高熱(39℃以上が2日以上続く)、嘔吐、けいれん、異常な泣き方(けたたましく泣く)、項部硬直(首が硬くなる)などは、髄膜炎の可能性があります。
これは手足口病の合併症として、稀に起こることがあります。発症から数日後に出現することもあるため、一度症状が落ち着いたと思っても、その後高熱が再び出た場合は注意が必要です。
脱水の兆候
尿が出ない、口の中が乾いている、ぐったりしている、唇が乾いているなどは脱水の兆候です。
呼吸困難
息苦しさ、呼吸が早い、胸部の陥没などは、他のウイルスによる肺炎の可能性があります。
その他の異常
手足の冷感、異常な発汗、意識の変化なども医療機関への受診が必要です。
予防方法
手洗いの徹底
手足口病の予防は、基本的には手洗いに尽きます。特に、おむつ替え後、トイレ後、食事前の手洗いが重要です。
ウイルスはアルコール消毒に強いため、アルコールハンドジェルより石けんと流水での手洗いが有効です。30秒以上、指の間や爪の周りまで丁寧に洗うことがポイントです。
接触感染の防止
共有のおもちゃを頻繁に接触した場合は、定期的に洗浄・消毒することで、感染リスクを低減できます。
ワクチンはありません
現在のところ、手足口病に対する定期接種ワクチンはありません。エンテロウイルス71に対するワクチンは海外で開発されていますが、日本ではまだ認可されていません。
したがって、予防は感染対策に頼るしかないのが現状です。
よくある質問
兄弟姉妹へのうつりやすさは
手足口病は非常に感染力が強いウイルスです。兄弟姉妹がいる場合、一度かかると高確率で他の子どもにもうつります。わが家でも上の子が感染した1週間後に、下の子も発症しました。
何度もかかることはありますか
複数のウイルス亜種が存在するため、理論的には何度もかかる可能性があります。ただし、一度同じ亜種にかかると、その後の感染では症状が軽くなることが多いです。
妊娠中の母親への影響
妊娠中に母親が手足口病にかかった場合、ウイルスが胎児に感染することは非常に稀です。ただし、妊娠後期での感染の影響については、完全には解明されていません。心配な場合は産科医に相談してください。
大人もかかりますか
大人もかかります。大人の場合、子どもより症状が重くなる傾向があります。高熱、強い筋肉痛、関節痛などを訴える大人も多く、仕事を休まなければならないことも珍しくありません。
まとめ
手足口病は、夏に流行するウイルス感染症で、90%以上は軽症です。自宅での適切なケア、特に食事管理と水分補給が重要です。
登園の判断は園の方針によって異なりますが、医学的には解熱後で全身状態が良好なら登園を許可してもよい状態です。ただし、子どもの体力回復を優先させることは忘れずに。
重症化は稀ですが、持続的な高熱、嘔吐、けいれんなどの兆候が出たら、すぐに医療機関を受診してください。
医師確認済み
labo-pediatricianが「全文」を確認 (2026/5/18)
最終更新: 2026年5月18日
参考資料:
- 厚生労働省. 手足口病のページ. https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/hfmd.html
- 日本小児科学会. 感染症ガイドライン.
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ラボの小児科医(日本小児科学会 小児科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/5/18)
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