熱性けいれんが起きたら何分で救急?初めての発作に慌てないための対応ガイド
この記事の目次
この記事のポイント
- けいれんが5分以上続く → すぐに119番通報。これが最初に覚えるべき基準
- 多くの熱性けいれんは2〜3分で自然に止まる。止まったら落ち着いて意識・呼吸・顔色を確認する
- 再発率は約30%。怖い数字に見えるが、大半は予後良好で後遺症を残さない
- てんかんへの移行率は2〜7%と低い(単純型の場合はさらに低い)
- ダイアップ座薬の予防的使用は、危険因子が複数ある場合に限って医師と相談する
📋 エビデンス
この記事の医学的内容は、日本小児神経学会「熱性けいれん診療ガイドライン2023」および日本小児科学会の公式情報に基づいています。個別の医療判断については必ずかかりつけ医にご相談ください。
出典: ↗深夜2時、子どもが突然けいれんを起こした——外来でそう話してくれる保護者の方は少なくありません。「何もできなかった」「怖くて頭が真っ白になった」と。
熱性けいれんは、生後6ヶ月から5歳の子どもの約7〜8%が経験します1。決して珍しい出来事ではありません。ただ、初めて見た瞬間の恐怖は相当なものです。白目をむき、手足がガクガクする。呼びかけても反応がない。「このまま死んでしまうのでは」と感じてしまうのは、無理のないことです。
この記事では、「まず5分計る」「止まったら何を見るか」「てんかんとどう違うのか」「また起きる確率は?」という、初めての熱性けいれんで保護者が知りたいことに、数字と根拠を示しながら答えます。
まず「5分ルール」を頭に入れる
熱性けいれんで最初に覚えるべき判断基準は、たったひとつです。
けいれんが5分以上続いている → 今すぐ119番通報するこれだけです。他のことはあとから考えていい。
なぜ5分なのか。日本小児神経学会の熱性けいれん診療ガイドライン2023では、発作の自然停止の可能性が5分を境に急激に下がるとされています1。2〜3分のけいれんは大半が自然に止まる。しかし5分を超えると、抗けいれん薬(ジアゼパム)の静脈投与が必要になるケースが増えます。病院に着いてから投与するまでに時間がかかるため、5分で救急車を呼ぶことで、適切な処置が間に合うタイムラインを確保できます。
外来では「なんで5分も待たなければならないのか」と聞かれることがあります。理由は、1〜2分で止まるけいれんに対して救急搬送が多くなりすぎると、本当に必要なケースへの対応が遅れるからです。でも「5分」という基準は保護者にとっても医療側にとっても合理的な目安です。スマホのストップウォッチ機能を使って、発作が始まった瞬間から計り始めてください。
💡 実際に5分待つのはとても長い
外来で保護者の方に聞くと、「5分は待てる気がしなかった」という声は少なくありません。それは当然の感覚です。顔色が著しく悪い、唇が青い、呼吸が止まっているように見える——そういった様子があれば、5分を待たずに119番してかまいません。また、けいれんが止まった後でも強い不安がある場合は、近くの救急外来や休日夜間救急に電話で状況を伝えて相談することも選択肢のひとつです。
けいれん中にしてはいけないこと
焦りのあまり、かえって子どもを傷つけてしまう行動があります。
- 口の中に何かを入れない(舌をかむことへの恐怖から指やタオルを入れるのは危険。気道閉塞・嚙み傷の原因になる)
- 体を強く押さえつけない(筋肉の収縮に逆らうことで骨折リスクが生じる)
- 揺り動かさない
- 水や薬を飲ませない(嚥下できず誤嚥の危険がある)
してほしいことは3つです。
- 周囲の危険物をどかし、床などの安全な場所に寝かせる
- 横向きにする(嘔吐物による窒息防止)
- 時間を計る(5分を過ぎたら119番)
それだけでいい。「何もできなかった」ではなく、「見守って安全を確保した」で正解です。
止まったあとの観察ポイント
多くの熱性けいれんは2〜3分以内に自然に止まります。止まったら、次の3点を順番に確認してください。
1. 呼びかけへの反応
名前を呼んで目が開くか、視線が合うか。すぐに反応がなくても、けいれん後は「もうろう状態(発作後状態)」として数分〜十数分、ぼーっとすることがあります。これは正常な経過です。徐々に意識が戻ってくれば経過観察で構いません。
ただし、以下の場合はすぐに救急を受診してください。
- けいれんが止まって15分以上経っても意識が戻らない
- ぐったりして自発的に動かない
- 呼吸が浅い・ゼーゼーしている
2. 顔色と唇の色
正常に戻れば、ほんのり赤みがある顔色に戻ります。青紫色(チアノーゼ)が止まっても続く場合は呼吸の問題を疑います。すぐに救急対応が必要です。
けいれん中は全身の筋肉が収縮して一時的に顔色が悪くなることがあります。止まったあとに徐々に戻っていくかどうかを見てください。
3. 手足の左右差・麻痺
両手両足が均等に動くか確認します。片側だけ動かない・力が入らないなら、脳への影響を疑う所見であり、小児神経専門医への紹介が必要になるケースがあります。
うちのクリニックでは、翌朝に「昨夜けいれんがあった」と連絡をくれる保護者の方によく聞きます。「止まったあと泣いてくれたから大丈夫と思った」という方が多く、実際その判断はおおむね正しいです。泣くということは、意識があり、呼吸できているサインです。
熱性けいれんとてんかんの違い
保護者が最も恐れているのは、「このままてんかんになるのでは?」という不安です。正直に数字を示します。
熱性けいれんからてんかんへの移行率は、単純型熱性けいれんでは約1〜2%、複雑型でも5〜10%程度とされています1。一般小児集団のてんかん有症率(約0.5〜1%)と比べるとやや高いですが、「熱性けいれんがあればてんかんになる」というわけでは全くありません。
違いを整理します。
| 熱性けいれん | てんかん | |
|---|---|---|
| 発症のきっかけ | 発熱(38℃以上)が必要 | 発熱がなくても起きる |
| 年齢 | 生後6ヶ月〜5歳が多い | 年齢を問わない |
| 発作の種類 | 主に全身性(両手足) | 部分発作も含む様々な形 |
| 脳波 | 多くは正常または軽微な変化 | 特徴的な異常波形 |
| 予後 | 大多数で後遺症なし | 治療継続が必要なことが多い |
「発熱のないけいれんが繰り返す」「部分発作(手足の一部だけけいれんする)が起きる」「発作後に長時間意識が戻らない」——こうした状況があれば、てんかんの評価が必要です。かかりつけ医に相談し、脳波検査を検討してください。
再発率30%という数字をどう受け止めるか
1回目の熱性けいれんを経験した子どもが、2回目を起こす確率は約30%です1。3人に1人、と聞くと高く感じるかもしれません。
ただ、この30%という数字には重要な文脈があります。
- 再発したとしても、ほとんどは同じく2〜3分で止まる
- 再発があっても脳への後遺症はほぼ生じない
- 5歳を過ぎると発熱性のけいれんは急激に起きにくくなる
再発リスクが高い因子は以下のとおりです。
- 初回の発症年齢が15ヶ月未満
- 発作前の発熱期間が1時間以内(急激に熱が上がった)
- 第一度近親者(親・兄弟)に熱性けいれんまたはてんかんの既往がある
このうち複数の因子が重なる場合は、ダイアップ座薬の予防的使用を医師と相談する価値があります。
妻に「2回目ってどのくらいで起きるの?」と聞かれたので調べたことがあります。再発の多くは最初のけいれんから1年以内で、発熱時に起こりやすい。「熱が出たら気をつける」という心構えが、保護者の不安を実際に和らげます。
ダイアップ座薬(ジアゼパム坐薬)の使いどき・使い方
ダイアップはジアゼパムという成分の坐薬で、けいれんを予防・停止させる効果があります。処方されている家庭も多いと思いますが、「いつ使えばいいのか」で迷う方が多いです。
予防的投与の対象
日本小児神経学会のガイドライン2023では、以下の因子を複数もつ場合に予防的使用を考慮するとしています1。
- けいれんを2回以上繰り返している
- 15分以上続くけいれんの既往(遷延性発作)
- 熱性けいれん発症後24時間以内の再発既往
- 神経学的異常・発達の遅れがある
- 第一度近親者にてんかんの既往がある
逆に言えば、単純型の熱性けいれんを1回経験しただけの子に、必ずしもダイアップを処方する必要はありません。
使い方の基本
処方されたら、必ず担当医から具体的な指示を受けてください。一般的な使用法の目安を示しますが、個々の体重・剤型により異なります。
- 38℃以上の発熱を確認した時点で1回目を使用
- 1回目から8時間後に発熱が続いていれば2回目を追加
- けいれん発作が起きてしまった場合(発作中)には使用しない(誤嚥リスクがある)
スタッフの一人が「保育園の先生にどう説明すればいいか」と質問してきました。そのときに伝えたのが次の項目です。
保育園・幼稚園への説明の仕方
熱性けいれんの既往がある子を集団保育に預ける際は、施設側に正確な情報を伝えることが大切です。口頭だけでなく、書面で残すと安心です。
伝えるべき内容は以下のとおりです。
- 「熱性けいれんの既往があること」
- 「発熱時に使用する坐薬(ダイアップ)を処方されていること」
- けいれんが起きたときの対応手順(横向きに寝かせる → 5分計る → 止まらなければ119番)
- かかりつけ医の連絡先
かかりつけ医に「保育園提出用の情報提供書」を依頼すると、施設との連携がスムーズになります。多くのクリニックで対応しています。遠慮なく頼んでみてください。
また、ダイアップ坐薬を施設に預けて使用してもらうには、「医療行為の委任」に関わるため、施設側と事前に確認が必要です。施設によって対応が異なりますので、入園・入所前に確認しておくことをおすすめします。
まとめ
熱性けいれんを目の前にしたとき、パニックになるのは当然です。でも、覚えることはシンプルです。
- 5分以上 → 119番。これだけ
- けいれん中は見守る。口に何も入れない、押さえつけない
- 止まったら意識・呼吸・顔色を確認
- てんかん移行率は低い。再発率30%でも後遺症はほぼない
- ダイアップの使用適応は医師と相談して決める
- 保育園には書面で正確に伝える
初めての熱性けいれんは、保護者にとって間違いなくトラウマ的な体験です。でも、正しい知識を持っていれば、「あのとき正しく対応できた」という自信につながります。かかりつけ医にいつでも相談してください。
医師確認済み
ラボの小児科医(小児科専門医・アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/5/14)
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参考文献
医師確認済み
ラボの小児科医(日本小児科学会 小児科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/5/14)
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