麻疹(はしか)2026年流行:小児科医が伝える感染力・合併症・ワクチンの全て
医療解説

麻疹(はしか)2026年流行:小児科医が伝える感染力・合併症・ワクチンの全て

公開: 2026年5月13日 更新: 2026年5月13日

この記事のポイント

  • 2026年5月8日時点で国内麻疹報告数は436例に達し、過去10年で最多水準
  • 麻疹は空気感染するため、マスクや手洗いだけでは予防できない。ワクチン接種が唯一の有効な対抗手段
  • 特異的な治療薬は存在しない。発症したら対症療法のみ
  • MRワクチン定期接種は第1期(1歳)・第2期(年長)の2回。2回接種で97%が免疫を獲得
  • 1歳未満でも生後6ヶ月以上なら緊急時の任意接種が可能(定期接種には別途要受診)
  • 5歳未満での麻疹罹患は、数年後に死に至る合併症(SSPE)のリスクが1,300〜3,300人に1人

広告表記当サイトはアフィリエイト広告を掲載しています。商品・サービスの紹介にあたり、広告主から報酬を受け取る場合がありますが、記事内容や評価には一切影響しません。

📋 エビデンス

この記事の医学的内容は、JIHS(国立健康危機管理研究機構)・厚生労働省・日本小児科学会・WHO・CDCの公式情報に基づいています。個別の医療判断については必ずかかりつけ医にご相談ください。

出典: ↗

2026年春、麻疹(はしか)の国内感染者数が急増しています。

「最近あまり聞かない病気では?」と思う方も多いかもしれません。しかし実際には、2026年5月8日時点で国内報告数は436例に達し、過去10年で最多水準となっています。直近1週間(4月26日まで)の新規患者数は68人で、今年に入って最多を更新しました。東京都211人・神奈川県40人・鹿児島県34人・千葉県27人など、都市部を中心に各地で集団発生が続いています。

特に心配なのは、まだワクチンを接種できない乳児を持つ親御さんです。

この記事では、小児科医の立場から麻疹の基本情報・なぜ今流行しているのか・ワクチンの正しい知識・1歳未満のお子さんへの対応について、エビデンスに基づいて解説します。


麻疹(はしか)とは

麻疹は麻疹ウイルス(Measles virus)による急性の感染症です。日本では「はしか」とも呼ばれます。

感染すると免疫機能が一時的に大きく低下し、肺炎・脳炎・中耳炎などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。また、数年〜数十年後に致死的な脳炎(SSPE)を発症するリスクが乳幼児では特に高いことも知られています。


麻疹の感染力は「別格」

麻疹が特に危険な理由のひとつは、その圧倒的な感染力です。

感染症の感染力を示す指標にR0(基本再生産数)があります。これは「1人の感染者が何人に感染を広げるか」を示す数値です。

感染症R0(基本再生産数)
麻疹12〜18
新型コロナウイルス(オミクロン株)8〜15
インフルエンザ2〜3
季節性風邪2〜3

麻疹のR0は12〜18。免疫を持たない1人の感染者から、12〜18人に感染が広がりうるということです(JIHS)。

さらに恐ろしいのは、感染経路が空気感染(飛沫核感染)であること。麻疹ウイルスは感染者が退室した後も最大2時間、空気中に残存します。同じ空間にいるだけで感染しうる感染症です。

免疫のない人が感染者と同じ空間に入ると、90%以上が発症するとされています(JIHS・WHO)。

マスクでは防げない

麻疹は飛沫感染・接触感染・空気感染の三経路すべてで感染します。

通常のマスクは空気感染を完全には防ぐことができません。厚生労働省は「手洗いやマスクだけでは、麻しんを予防することはできません」と明記しています。


麻疹の症状・経過

潜伏期間は通常10〜12日。その後、3つの段階を経て経過します。

カタル期(前駆期):2〜4日間

  • 38℃前後の発熱、強い倦怠感
  • 鼻水・咳・結膜炎(目やに・充血)
  • コプリック斑:口の中の粘膜に出る白い小さな斑点。麻疹に特有の所見で、発疹の1〜2日前に出現します

この時期が感染力の最も強い時期です。症状はただの風邪に似ており、気づかず外出してしまうことが感染拡大の一因になっています。

発疹期:3〜5日間

  • 2峰性発熱:一度37〜38℃台に下がった後、39.5℃以上の高熱が再び出る
  • 発疹が耳の後ろ・首から始まり、顔→体幹→四肢へと広がる
  • 全身的な状態悪化(ぐったり感)

回復期

  • 発疹は色素沈着を残しながら退色
  • 7〜10日程度で回復に向かう

合併症:「ただの風邪」ではない理由

麻疹は「子どもが一度かかる病気」として軽視されることがありますが、合併症リスクは決して小さくありません。

合併症頻度特記事項
中耳炎約7%最も多い合併症
肺炎約6%死亡例の60%が肺炎起因
脳炎1,000人に0.5〜1人致命率約15%、25%に後遺症
SSPE(亜急性硬化性全脳炎)5歳未満での罹患で1,300〜3,300人に1人数年〜数十年後に発症、必ず死亡

先進国でも、免疫のない人が麻疹にかかった場合、約1/5が入院を要するとされています(CDC)。

SSPEについて:最も知ってほしい合併症

SSPE(亜急性硬化性全脳炎)は、麻疹罹患後に平均4〜8年の潜伏期を経て発症する脳の病気です。

  • 一度発症すると治療法がなく、平均6〜9ヶ月で死亡します
  • 5歳未満での麻疹罹患で、1,300〜3,300人に1人の割合で発症します
  • 1歳未満での罹患はさらにリスクが高くなります(JIHS)

子どもが元気に麻疹から回復したように見えても、数年後にこの合併症が現れることがあります。「かかってしまえばよい」という考え方は、SSPEのリスクを無視した危険な誤解です。


治療法はない

麻疹ウイルスに対する特異的な治療薬は、現時点では世界的に存在しません(JIHS・CDC)。

治療は「対症療法」のみです。

  • 解熱・鎮痛
  • 水分・栄養補給
  • 細菌性二次感染(肺炎・中耳炎)への抗菌薬投与
  • ビタミンA補充(重症例でのWHO推奨)

発症してしまえば、ウイルスそのものを排除する手段はありません。だからこそ、「発症前にワクチンで免疫をつけておくこと」が麻疹に対する唯一の有効な対抗手段です。


ワクチンのスケジュール

定期接種(MRワクチン)

日本では、麻疹・風疹の混合ワクチン(MRワクチン)が定期接種として2回行われます。

接種期接種対象接種期間
第1期1歳児1歳の誕生日〜2歳の誕生日の前日
第2期年長児小学校入学前1年間(4月1日〜翌3月31日)

2回接種完了で、97%以上が十分な免疫を獲得します(CDC)。

お子さんのワクチン接種状況の確認を

2024年度の国内ワクチン接種率は、第1期92.7%・第2期91.0%(厚生労働省)。いずれも集団免疫の目標(95%)に届いていません。

お子さんの接種状況が不明な方は、母子手帳をご確認ください。


1歳未満のお子さんをお持ちの親御さんへ

最も心配されているのは、まだワクチンを接種できない乳児を持つ親御さんではないでしょうか。

生後6ヶ月未満の乳児

生後6ヶ月未満の乳児には、お母さんから受け取った移行抗体(母子免疫)がある程度の保護を与えています。ただしこの抗体は生後6ヶ月ごろから急速に低下します。

注意点があります。現在の母親世代(ワクチン接種者)は、自然感染者より移行抗体価が低い傾向があります。そのため、以前の世代と比べて母子免疫の保護期間が短くなっている可能性が指摘されています。

この年齢では接種できないため、できる限り感染者との接触を避けることが最善策です。

生後6ヶ月以上1歳未満の乳児

生後6ヶ月を過ぎると移行抗体が低下し、感受性(感染しやすい状態)が生じます。

この月齢では、通常MRワクチンは接種できません。ただし以下の緊急避難的な状況では、任意接種として受けることが可能です。

  • 麻疹が流行している地域への渡航
  • 家族や身近な人に感染者がいる

注意:生後6ヶ月〜1歳の間に接種した場合でも、1歳以降の定期接種(第1期・第2期)を改めて受ける必要があります。この月齢では母体由来の抗体が残っていることがあり、ワクチンの効果が不十分になるためです。

必ずかかりつけの小児科に相談してから接種を検討してください。

1歳未満の乳児と過ごす大人・きょうだいへ

乳児を守る最も効果的な方法は、身近にいる大人・きょうだいが確実に2回ワクチン接種を完了しておくことです。

お父さん・お母さん・祖父母・上のきょうだいの接種歴を今一度ご確認ください。


なぜ今、こんなに流行しているのか

2026年の麻疹急増には、複数の要因が絡み合っています。

1. ワクチン接種率の低下

2024年度の接種率は第1期92.7%、第2期91.0%。集団免疫の維持には95%以上が必要とされていますが、COVID-19流行以降、受診控えの影響で接種率が低下したままになっています。

9つの道県では第2期接種率が90%未満でした(北海道・宮城・岐阜・静岡・高知・長崎・大分・鹿児島・沖縄)。

2. 感受性者(免疫のない人)の蓄積

2024年の感染症流行予測調査によると、8〜47歳で麻疹の十分な抗体価(16.0以上)を保有する人は50%未満です。全人口での抗体保有率は86.6%にとどまり、集団免疫には届いていません。

接種歴がない・1回だけの接種・接種後の年数経過による抗体価低下など、様々な理由で感受性者が蓄積しています。

3. 輸入例の増加と世界的な流行

COVID-19対策の緩和後、海外渡航が再開しました。2026年の国内感染例のうち22%は輸入例で、インドネシアからが最多(11例)でした。

海外の状況も深刻です。インドネシアでは2025年に17,204例が報告され、米国でも2025年に2,288例(うち死亡3例)、2026年3月時点で1,575例が確認されています(CDC)。

4. 修飾麻疹(非典型的な症状)

ワクチン接種済みや部分免疫のある人が感染した場合、発疹が薄い・発熱が軽いなど非典型的な症状(修飾麻疹)を示すことがあります。診断が遅れやすく、気づかぬうちに感染を広げてしまうリスクがあります。


今、親御さんにお願いしたいこと

  1. お子さんの接種状況を確認する:母子手帳で第1期・第2期の両方が完了しているかを確認してください

  2. ご自身・パートナー・祖父母の接種歴を確認する:特に1990年代前後に生まれた方は、1回しか接種していない可能性があります。かかりつけ医に抗体価検査を相談することも選択肢のひとつです

  3. 1歳の誕生日が来たらすぐ接種を:第1期の接種は「1歳の誕生日から」が原則です。遅らせるほどリスクが高まります

  4. 発熱+発疹の組み合わせは早めに受診を:特に感染リスクのある場所への外出後に発熱した場合、受診前にかかりつけ医に電話で相談してください(医療機関内での感染拡大予防のため)


📋 エビデンス

本記事の医学的内容は、JIHS・厚生労働省・日本小児科学会・WHO・CDCの公式情報に基づいています。記事内の情報は一般的な医学知識の提供を目的としており、個別の診断・治療判断を行うものではありません。お子さんの健康状態や接種スケジュールについては、必ずかかりつけの医師にご相談ください。

出典: ↗

あわせて読みたい

👨‍⚕️

医師確認済み

ラボの小児科医(日本小児科学会 小児科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/5/13)

関連記事

ラボの小児科医

ラボの小児科医

小児科専門医・アレルギー専門医

日本小児科学会 小児科専門医 日本アレルギー学会 アレルギー専門医

専門領域

小児一般診療 アレルギー疾患(食物・アトピー・気管支喘息) 皮膚疾患 発達相談

「日々の外来で保護者から寄せられる疑問をもとに、ガイドラインと実臨床の両面から解説しています。」

小児科専門医・アレルギー専門医。二児の父。診療ガイドラインと論文に基づく医療解説と、親として本当に使ってよかった用品レビューを発信。

当サイトはアフィリエイト広告を掲載しています。詳しくは広告についてをご覧ください。