コロナ死亡者は年間数万人・インフルの15倍 — 数字の意味を小児科医が読み解く
医療解説

コロナ死亡者は年間数万人・インフルの15倍 — 数字の意味を小児科医が読み解く

公開: 2026年5月13日 更新: 2026年5月13日

この記事のポイント

  • 新型コロナの年間死亡者数は2022年がピーク(47,638人)。2024年は26,302人(〜8月)で推移
  • 5類移行後1年(2023年5〜2024年4月)の死亡者数はインフルエンザの約15倍
  • ただし死亡者の96%は65歳以上。子ども自身のリスクは相対的に低い
  • 一方、健常児でも急激に悪化するケースがある(2022年小児死亡例の58%が基礎疾患のない健常児)
  • 2026年現在の感染水準は低水準(前年同期比約半減)
  • 子どものリスクだけでなく、高齢の祖父母への感染リスクも家族で考えることが重要

📋 エビデンス

この記事のデータは厚生労働省人口動態統計・COVID-19診療の手引き第10.1版・日本小児科学会の公式情報に基づいています。

出典: ↗

「コロナって、もう普通の風邪と同じじゃないの?」

5類移行から3年近くが経ち、そう感じている方も多いかもしれません。マスクをしている人も減り、行動制限もなくなりました。

しかし数字を見ると、新型コロナはまだ「普通の風邪」とは言い切れない感染症です。一方で、子どもへのリスクは大人・高齢者とはまったく異なります。

この記事では、最新の統計データをもとに「年間数万人の死亡」という数字の正確な意味と、お子さんを持つ親御さんが知っておくべきことを整理します。


年間死亡者数の推移

厚生労働省の人口動態統計によると、COVID-19による年間死亡者数は以下のように推移しています。

死亡者数
2020年3,466人
2021年16,766人
2022年47,638人(ピーク)
2023年38,086人
2024年26,302人(1〜8月)
2025年2万人超(報道ベース)

累計死亡者数は2024年8月時点で13万人超に達しています。

インフルエンザとの比較

5類感染症に移行したことで、新型コロナはインフルエンザと「同じ分類」になりました。しかし死亡者数の規模は全く異なります。

5類移行後の最初の1年(2023年5月〜2024年4月)のデータで比較すると:

  • 新型コロナ:32,576人
  • インフルエンザ:2,244人

新型コロナの死亡者数はインフルエンザの約15倍です(厚生労働省)。「5類だから同じ」は数字上は正確ではありません。


「年間数万人」を正確に読む

死亡者の96%は65歳以上

累計死亡者(〜2024年8月)13万人超の年齢別内訳(厚生労働省):

年齢層人数割合
80歳以上10万720人76%
65歳以上(合計)約12万5,000人96%
40〜50代3,006人2.3%
20〜30代295人0.2%
20歳未満141人0.1%

死亡者の大多数は高齢者です。子ども自身が重篤に亡くなるリスクは統計的に極めて低い。

この数字は「コロナは怖くない」を意味しません。高齢者にとっては依然として重篤な感染症であり、身近に高齢の祖父母がいる家庭では、子どもが感染源になるリスクについても考える必要があります。


子ども・乳幼児へのリスク

重症化率

COVID-19診療の手引き第10.1版(厚生労働省、2024年4月)によると:

  • 基礎疾患なしの小児重症化率:0.2%
  • 基礎疾患ありの小児重症化率:5.1%

オミクロン流行期(985例の海外データ)では、軽症97.8%・中等症2.2%・重症0%。

数字だけを見れば、基礎疾患のない子どもの重症化は稀です。

しかし「ゼロではない」

2022年1〜9月の国内小児死亡例(20歳未満62例)で注目すべき点があります。

  • 58%(29例)が基礎疾患のない健常児
  • 発症から心肺停止まで中央値わずか2日(81%が1週間未満)

基礎疾患がなくても急速に悪化するケースが実際に起きています。特に5歳未満が約半数(0歳:9例、1〜4歳:19例)を占めていました。

MIS-Cについて

COVID-19感染後2〜10週に、川崎病に似た全身の炎症を引き起こす「MIS-C(小児多系統炎症性症候群)」が起きることがあります。

  • 日本での報告:2024年時点で120例以上
  • 国内での死亡例はゼロ
  • アジア人は欧米より発症率が低い傾向

感染から数週間後に以下の症状が出現した場合は受診を検討してください。

  • 発熱(38℃以上が4日以上続く)
  • 全身の発疹・目の充血
  • 唇や舌の赤みと腫れ(川崎病に似た症状)

2026年現在の状況

感染水準は低い

厚生労働省の2026年第18週(4月27日〜5月3日)の報告によると、全国定点当たり報告数は0.59人。前年同期(1.10人)と比べ約半減しており、現在は低水準で推移しています。

入院患者でも80歳以上が約半数を占め、高齢者への影響が引き続き大きいことが分かります。

主流変異株(2026年5月時点)

2026年1月以降、NB.1.8.1(ニンバス)系統が国内の80%超を占めています。

特徴として「激しい咽頭痛」が報告されており、これが感染に気づくひとつの目安になります。感染力は従来株よりやや強いとされますが、既存免疫(ワクチン接種・既感染)への回避能は同等レベルとされています。


親御さんへの3つのメッセージ

1. 子ども自身の重症化は稀だが、注意が必要なサインを知っておく

基礎疾患のない子どもが重篤になるリスクは低いですが、発症後急激に悪化することがあります。以下のサインが出たら早めに受診してください:

  • 高熱が3日以上続く
  • 水分をほとんど取れない
  • ぐったりして反応が悪い
  • 呼吸が速い・苦しそう
  • 発熱から2〜6週後に川崎病に似た症状

2. 家族全体のリスクを考える

子ども自身のリスクは低い一方、子どもが高齢の祖父母に感染を広げるリスクは無視できません。同居・頻繁に接触する高齢の家族がいる場合、家族全体での感染予防(換気・体調不良時の接触回避)を心がけることが大切です。

3. ワクチン接種の選択肢を検討する

日本小児科学会は2025/26シーズンも、生後6か月〜17歳全員への接種を推奨しています。特に次の状況では接種のメリットが大きいとされています:

  • 基礎疾患(心疾患・呼吸器疾患・免疫不全等)がある
  • 高齢者や免疫低下者と同居している
  • 医療機関・保育施設等に従事する家族がいる

2024年度からコロナワクチンの定期接種対象は65歳以上となり、小児は任意接種です。接種の判断はかかりつけ医にご相談ください。


📋 エビデンス

本記事のデータは厚生労働省人口動態統計・COVID-19診療の手引き第10.1版(2024年4月)・日本小児科学会の公式見解に基づいています。個別の受診・ワクチン判断については必ずかかりつけ医にご相談ください。

出典: ↗

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小児科専門医・アレルギー専門医

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小児一般診療 アレルギー疾患(食物・アトピー・気管支喘息) 皮膚疾患 発達相談

「日々の外来で保護者から寄せられる疑問をもとに、ガイドラインと実臨床の両面から解説しています。」

小児科専門医・アレルギー専門医。二児の父。診療ガイドラインと論文に基づく医療解説と、親として本当に使ってよかった用品レビューを発信。

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