子どもの喘息 — 発作の重症度判断・家庭での対応・受診タイミングの完全ガイド
この記事の目次
まず知っておきたい結論
深夜の救急外来には、喘息発作の子どもたちがやってきます。たいていの場合、「昼間からゼーゼーしていたけれど、そのうち治るかと思って」というパターンです。
喘息発作は重症度によって対応が変わります。軽度(小発作)なら吸入薬で様子を見る。吸入後1時間改善なしなら受診。チアノーゼや横になれないほどの苦しさがあれば119番——対応の3パターンを知っておくだけで、慌てずに動けます。
子どもの喘息とは
有病率と発症時期
気管支喘息は、気道(気管支)に慢性的な炎症が起きている病気です。普段は症状がなくても、何らかのきっかけで気道が狭くなり、呼吸困難や咳・ゼーゼーが起きます。
日本小児アレルギー学会の統計では、小児の約10〜12%が気管支喘息と診断されています。子ども10人に1人の割合で、身近な病気です。
発症のピークは2〜5歳。保育園に入ってから発作が増えたという親の話はよく聞きます。
外来でも「入園してから急に咳の回数が増えた」という相談が増えるのは、4月と9月です。集団生活で風邪ウイルスにさらされる機会が増えること、季節の変わり目の気温差が引き金になることが理由です。
発作のしくみ
喘息の発作は、気道の炎症と気道狭窄によって起きます。
- ウイルス感染(風邪)
- 花粉・ホコリ・ダニなどのアレルゲン
- 冷たい空気・煙・激しい運動
- 気温の急激な変化
これらが引き金となって気管支が収縮し、呼吸が苦しくなります。息を吸うときより息を吐くときのほうが苦しいのが喘息発作の特徴です。
発作の重症度を見分ける4段階
喘息発作の重症度は「小発作・中発作・大発作・呼吸不全」の4段階で評価します(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023)。
重症度の目安
| 状態 | 主なサイン | 対応 |
|---|---|---|
| 小発作 | ゼーゼーするが走れる・遊べる。咳が続く | 吸入薬→15分後評価 |
| 中発作 | 歩くのがつらい。会話できる。横になれる | 吸入薬→改善なければ受診 |
| 大発作 | 横になれない。短い言葉しか言えない。肩で息をしている | 即受診(車で病院へ) |
| 呼吸不全 | チアノーゼ。意識がもうろうとしている | 119番 |
子どもは苦しくても「遊びをやめたくない」と言わないことがあります。表情や発言だけを信じず、呼吸の様子(肩の動き・肋骨間のへこみ)を目で確認してください。
「大発作」のサインを覚える
次のどれか一つでも当てはまれば大発作以上と考え、すぐに受診してください。
- 横になれない(座っているほうが楽)
- 短い単語しか言えない(「くるしい」「むね」など)
- 肩や首の筋肉を使って呼吸している(肩呼吸)
- 鎖骨や肋骨の間が呼吸のたびにへこむ(陥没呼吸)
- 顔色が悪く、唇や爪が青紫色になっている(チアノーゼ)
チアノーゼがある場合は119番です。自家用車での移動は勧めません。
家庭での対応フロー
β2刺激薬(発作止め)の使い方
発作が起きたら、まずβ2刺激薬(気管支拡張薬)の吸入を行います。処方されている場合は、医師の指示通りに使用してください。
吸入後は15分間、安静にして様子を見ます。
- 15分後に呼吸が楽になり、ゼーゼーが減っていれば有効
- 改善が見られなければ、もう1回吸入して(医師の指示がある場合)30分後に再評価
- 吸入後1時間経っても改善なしor悪化 → 受診
後輩の女性小児科医(自身の子どもも喘息持ち)から聞いた話ですが、彼女は「吸入後に何分経ったか」を必ずスマートフォンのタイマーで計るそうです。焦っていると時間の感覚がなくなる——それは私も経験しています。
吸入スペーサーを使う
5歳以下の子どもには、スペーサー(補助具)を使った吸入が推奨されています(JPAC2023)。
スペーサーを使うと:
- タイミングを合わせなくても吸入できる
- 薬が効率よく気管支に届く
- 口への付着が減り、副作用リスクが下がる
処方された吸入器に対応したスペーサーを、かかりつけ医に確認してもらうことを勧めます。
吸入中・後の体位
発作中は仰向けに寝かせず、上半身を起こした姿勢(座位・半座位)をとらせます。気道が確保され、横隔膜が下がりやすくなるためです。
子どもが「横になりたい」と言っても、発作中は座った状態を維持させてください。横になれないほど苦しがっているなら、それ自体が大発作のサインです。
受診・119番のタイミング
受診すべきタイミング
吸入薬の有無と時間帯で対応が変わります。
日中(かかりつけ医が開いている時間)
吸入後1時間で改善なし、または中発作以上の症状があれば、かかりつけ医を受診してください。初めての発作も、軽症であっても受診を勧めます。
夜間・休日(時間外)
以下のいずれかなら夜間救急へ向かってください。
- 吸入後1時間以上症状が改善しない
- 吸入後に症状が悪化している
- 夜間に何度も目を覚まし眠れないほど苦しがっている
「夜になれば収まるかも」は禁物です。喘息の発作は夜間・早朝に悪化しやすい性質があります。
119番が必要な状態
繰り返しになりますが、以下は緊急です:
チアノーゼ・意識障害・吸入後も悪化している——この状態は自家用車での搬送中に容態が急変するリスクがあります。119番を呼んで、電話口で「喘息発作・チアノーゼあり」と伝えてください。
長期管理と発作予防
長期管理薬とは
喘息の治療には「発作止め(リリーバー)」と「長期管理薬(コントローラー)」の2種類があります。
長期管理薬(多くは吸入ステロイド薬)は、気道の慢性的な炎症を抑える薬です。発作が起きていない日も毎日続けることで、発作そのものを起きにくくします。
妻に「毎日使い続けて大丈夫なの?」と聞かれたことがあります。吸入ステロイドは適切な用量であれば全身への吸収はごくわずかで、長期安全性が確認されています。経口ステロイドとは性質が異なります。自己判断で減量・中断すると発作リスクが高まります。医師の指示通りに続けてください。
発作を減らす環境整備
- ダニ・ハウスダスト対策:寝具を週1回洗濯、布団はカバーで保護
- ペット:アレルゲンになりうるため、かかりつけ医に相談
- 受動喫煙ゼロ:喫煙者が同居している場合、発作リスクが大幅に上がる
- 風邪予防:手洗い・マスク着用で感染機会を減らす
保育園・幼稚園への対応
うちのクリニックの看護師(子育て中の2児の母)も「保育園にどう説明したらいいか」という相談をよく受けると話していました。
アレルギー疾患生活管理指導表を準備する
保育園・幼稚園での対応を依頼するには、医師が発行する「アレルギー疾患生活管理指導表」が必要です。厚生労働省が書式を定めており、喘息発作時の吸入薬使用の許可・使用方法・緊急連絡先を記載します。
園への引き渡しセット
- アレルギー疾患生活管理指導表(医師記入)
- 発作止め吸入薬(サルブタモールなど)
- 吸入スペーサー
- 保護者の緊急連絡先
「薬を置いておくことへの許可」は保育所保育指針に基づいており、多くの認可保育所は対応しています。不安であれば、小児科医から保育園宛の説明文書を添えてもらうと交渉がスムーズです。
よくある質問
- ゼーゼーしていても元気に遊んでいます。受診は必要ですか?
- 遊べていても、ゼーゼー・ヒューヒューという音が聞こえる場合は小発作の状態です。吸入薬があれば使用し、15分後に症状を評価してください。改善すれば経過観察で構いませんが、吸入後も変化がない・悪化するなら受診してください。
- 吸入後、どのくらいで効いているかわかりますか?
- β2刺激薬の吸入薬は吸入後15分で効果を評価します。15〜30分後に呼吸が楽になり、ゼーゼー音が減っていれば有効です。内服薬は30分後が目安。吸入後1時間経っても改善がなければ受診してください。
- 119番を呼ぶべきサインはどんなときですか?
- チアノーゼ(口・爪が青紫色)・意識がもうろうとしている・横になれないほど苦しそう・吸入後も症状が悪化しているという状態が一つでもあれば、即座に119番を呼んでください。自力での移動は危険です。
- 保育園に吸入薬を預けることはできますか?
- できます。医師から「アレルギー疾患生活管理指導表」を発行してもらい、吸入器・使用方法・緊急連絡先をセットで園に提出します。吸入スペーサーも一緒に預けると保育士が対応しやすくなります。
- 長期管理薬は毎日使って大丈夫ですか?
- はい、長期管理薬は毎日続けることで発作を予防するための薬です。吸入ステロイドは適切に使用すれば全身への吸収はごくわずかで、長期使用しても安全性が確認されています。勝手に中断すると発作リスクが上がります。
まとめ
- 発作は「小発作→中発作→大発作→呼吸不全」の4段階で判断する
- 吸入薬後15分で評価。1時間改善なしなら受診
- チアノーゼ・意識障害・横になれないは119番
- 長期管理薬は毎日続けることが発作予防の柱
- 保育園には「アレルギー疾患生活管理指導表」と吸入器セットを
うちの子が初めて夜中に発作を起こしたとき、医師である私でも正直あわてました。あの経験から言えることは一つ——基準を知っているか知らないかで、その後の行動が全然違います。この記事を「夜中の発作が起きる前」に読んでおいてください。
医師確認済み
ラボの小児科医(小児科専門医・アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/5/21)
更新日: 2026年5月21日
引用元:
- 日本小児アレルギー学会「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023」https://www.jspaci.jp/journal/asthma2023/
- 環境再生保全機構「発作時の対応」https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/kodomonozensoku/hossa.html
- 厚生労働省「子どもの喘息」https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-06.pdf
医師確認済み
ラボの小児科医(日本小児科学会 小児科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/5/21)
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